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​提物 / SAGEMONO

日本人は提げる物が好きだ。街ではよく、鞄やキーケースなどにキーホルダーやチャームを提げている学生を見かける。それらは大切なお守りのように扱われていたり、自分の好みや趣味が反映されていたりもする。何故、日本人は物を提げることが好きなのだろうか。江戸時代から伝わる根付に理由があるかもしれない。

                          

 

根付は、ポルトガル人が日本に鉄砲とともに運んできた煙草と関係が深い。煙草は伝来されてすぐに嗜好品として日本人の生活に溶け込んだ。そして、富裕層の間でそれを持ち歩く事が粋とされたために、煙草入と胴乱(火薬入)を腰に提げる道具が必要となり、生まれたと言われている。後に、武士が礼装に用いた印籠にも根付が使用されたため、デザインや素材にも工夫が凝らされ、さらに発展を遂げた。その背景の一つには、戦国時代が終わり太平の世の到来により武器などを作っていた職人達が、類まれな技術を根付製作にも注いだ事だと推定される。江戸を生きた職人の情熱を見て、触れて、感じることができる手のひらサイズの美術品なのだ。                

 

そんな根付に出会える場所がある。

それは四ツ谷にある「提物屋 SAGEMONOYA」だ。フランス人のロベール・フレッシェル氏/ Robert Fleischel(国際根付ソサエティ /International Netsuke Society)日本代表により30年前に設立されたギャラリーである。

 

                     

根付の誕生  / A history of Netsuke

:提物屋 / SAGEMONOYA:

〒160-0004
東京都​新宿区四谷4-28-20 704
tel:03(3352)6286
https://ja.netsuke.com                             
e-mail:sagemonoya@gol.com 

​:下記でも「提物屋・SAGEMONOYA」の根付、提物の一部の取り扱いあり:
<GINZA SIX 6階 銀座蔦屋 根付コーナー>
​〒104-0061
東京都中央区銀座6-10-1

 

​根付の魅力 / The charme of Netsuke

*根付 / Netsuke

江戸時代に男性の間で流行した装飾品。印籠や煙草入れなどを紐で吊し帯に固定する留具として使われた。

 

注:江戸時代〜近代にかけてのものを「古根付」、昭和〜平成以降のものは「現代根付」とそれぞれに名称がある。本記事では「古根付」を紹介。

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<<interview>>
SAGEMONOYA Managing Director
吉田 ゆか里 /  Yukari Yoshida


 

 

提物屋はユーモアや迫力のある彫刻や、珍しい日本の美術品がずらりと並ぶお店だ。その店の主人は「根付サイズだ」とフレッシェル氏から声をかけられた吉田ゆか里さん。いつも笑顔でお話をしてくださるためついつい長居してしまう。吉田さんがお店に立つことになったのは知人の紹介からだったそうだが、幼い頃から日本文学に慣れ親しんでいたため、興味を持つことは自然な流れだったと言う。

​根付の知名度 / The recognition of Netsuke

「日本にあった素晴らしい根付は開国と共に主にヨーロッパへ流れてしまいました。その要因として考えられるのは、明治時代になり洋装を取り入れ着物を着る人が減少したこと、根付が日用品であった日本人と、鑑賞用の美術品として評価する外国人の感覚の差です。」

 

海外は根付を所蔵する美術館が多く、日本を代表する美術品として認められている。それに対して日本では東京国立博物館や京都清宗根付館、清水三年坂美術館、日下部民芸館など、わずかな場所でしか常設展示はされておらず、国内での印象が薄いように感じる。根付は大陸から渡ってきた仏像彫刻等ではなく、自国で発生した文化であるにもかかわらず、だ。

 

根付に興味を持たれた方は、ぜひ「提物屋 SAGEMONOYA」に予約を入れてみて欲しい。近年は大量生産された偽物が著しく出回っているが、提物屋では本物のみを取り扱っている。美術館とは違い実際に触れる事ができ、もちろん、購入も可能である。江戸時代のものでありながら手の届く価格のものが少なくないことに驚くだろう。

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吉田さんに好きな根付についてうかがった。

「味のある根付に惹かれます。初めは冷たいけれど、だんだんと暖かくなる根付も好きです。」

根付は、象牙や鹿角、木、陶磁など素材も多種多様である。

吉田さんがおっしゃっていたような、体温から熱が伝わりやすい金属素材もあり、個々で違う手触りを楽しめる。

 

「素材によっては今ではもう手に入らないものを使用してます。」

 

技法もさることながら、素材の点から見ても、いま、まったく同じものを作ることは不可能だろう。根付はどことなく「人」に似ている。世界にたったひとつのもの、という価値やそれぞれが持つ表情、さらに、出会い方や付き合い方もバラバラだからだ。360度、どの角度からみてもシルエットを楽しめるところも、魅力。

 

今回取り上げたのは「古根付」だが、近年でも新しい根付(「現代根付」)を製作する根付作家が存在する。高円宮家のコレクションを中心とした展示は全国各地で行なわれているが、その中には海外作家の現代根付も含まれている。

 

インタビューを終えて、蒐集家とまではいかずとも、お守りのようで相棒のような根付を私も見つけたいと思った。美術品でありながら身につける事ができたり、鞄やポケットに忍ばせて持ち歩くことができる点が嬉しい。​かつては男性の装飾品であったが、現代では男女を問わず使用している。和文化を肌で感じる事ができる根付はプレゼントしても喜ばれるのではないだろうか。

 

​Photography:KeitaGoto(w)

Text:Sea-port magazine​